空気を使うハイブリッド、スプリット・サイクル・エンジン



アメリカの技術開発会社Scuderi社が、“スプリット・サイクル”を採用した超高効率エンジンのプロトタイプを発表しました。大幅にエミッションが低く、史上最も効率の良い内燃機関のデザインだという、イメージだけではない、本当にエコロジカルなハイブリッド・エンジンの登場です。

このプロトタイプは1リッターのガソリンエンジンで有害な排ガスは既存の内燃機関より80%も削減されているそうです。Scuderi社社長のSal Scuderi氏は、
「もう7年もこのエンジンの開発を続けているが、私たちもこの技術が持つ可能性に、ほんの最近気づいたところなんです。ライセンス提供やOEMの契約がスムーズに行けば、多くの人が優れた燃費や環境にやさしい運転を享受することになるはずです」
と語っています。

新型エンジンを生産するためにはとてつもなく大きな投資が必要で、大企業のパートナーのいない現状では実現に向けて多くの課題がありますが、この技術がオットーサイクルに継ぎ、内燃機関を大幅に進化させる可能性があるとScuderiは考えているようです。通常の内燃機関の効率は33%ほどで、これは燃料の燃焼エネルギーの1/3を動力として利用できているということですが、スプリット・サイクル・エンジンならこの効率を40%~48%程度にまで向上させることができるようです。これは既存のエンジンより25~50%効率が良いということになります。

通常の4サイクルエンジンは、吸気・圧縮・燃焼・排気という4つのサイクルをひとつのシリンダーで受け持ちますが、スプリット・サイクル・エンジンはこの過程を分け、吸気・圧縮をひとつのシリンダーで、燃焼・排気をひとつのシリンダーで、計2つのシリンダーで行います。2つの目的の違うシリンダーをそれぞれ、空気を圧縮に特化したシリンダー、燃焼時の膨張率に最適化したシリンダーとして別形状に設計することができるので吸気の充填を最適化でき、高効率になるというわけです。また圧縮した空気を貯めるタンクをつければ、制動エネルギーを空気として貯められるエア・ハイブリッド・エンジンにもなり、この場合は、空気の温度が大幅に低くなるほかに、吸気を細かくコントロールしてさらに効率を上げられるというおまけもつきます。しかも、既存のエンジンと同じようなパーツで生産することができるため、複雑なスイッチングシステムの採用や、深刻な公害を引き起こしているニッケルなどの素材を使ったバッテリーは必要ありません。



ソース:MOTORAUTHORITY

昔から水陸両用車や空飛ぶ車などが開発されてきましたが、いつも性能的には「ワースト・オブ・ボス・ワールド(両方の世界の最悪)」と呼ばれてもしかたないものでした。これは適応しなければいけない二つの環境用の機能を一つにまとめているため、どちらの環境にいても、そこでは使わない機能を背負い込んでしまってるためです。

実は電気式のハイブリッド・カーも似たような問題をかかえていて、半分づつとはいえ、エンジンとモーター、燃料タンクとバッテリーの両方を積むため、大変重くなっていますし、生産のために追加される環境負荷も相当なものです。組立工場に集まってくるパーツの総移動距離のほうが、車中での一生分の移動距離を上回るのは間違いありません。一見ハイブリッドの燃費が良いように見えるのは、実は走行環境によるものだということを忘れちゃいかんのです。

その点このエンジンなら、走行条件に機敏に応じなければならないため、スイートスポットより柔軟性を主眼にして設計されたエンジンと違って、内燃機関の効率を大幅に上げられる(つまりパワーアップもできる)うえ、制動時に熱として捨てられれていた動的エネルギーを、複雑なシステムを使わずに活用することも可能なので、電気式ハイブリッドより安価に燃費の良い車を作ることが可能なんじゃないでしょうか。

イメージと価格競争だけで、自分さえ良ければよいとばかりに派手な喧嘩をふっかけるイメージエコ企業は素性がばれるまで放っておいて、エンジンおたくで真面目なマツダがこのエンジンを採用してくれるのをひそかに期待してます。

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